舞台『星の王女さま』は何を投げかけるか

すべてにおいて結論はひとつじゃない、というかそもそも存在しない(かも)

 

 

 

 

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天王洲銀河劇場で上演されていた『星の王女さま』を観劇した

サン=テグジュペリによる『星の王子さま』を原案とした作品であり、出演は乃木坂46の3期生から8名とスウィング8名の計16名

 

この作品から感じ取ったものの一部を雑感的に書いてみる

 

 

 

脚本・演出の畑雅文氏曰く、

作品にメッセージ性を持たせることに対して抵抗がありエンターテイメントとして今作を提供している

とのことなのでただの解釈のひとつと捉えてくださいな

 

 

 

 

 

原案『星の王子さま』(以下、原案)では、地球上の砂漠に不時着した操縦士が王子さまのこれまでの旅の話を聞く、というストーリーだったが、今作『星の王女さま』(以下、今作)では、ある砂漠の星に不時着した宇宙飛行士が王女さまと出会い一緒にほかの星を巡る、というストーリーに

 

この違いはかなり大きく、

最終的に王子さまにとってのバラの存在に気付く、のではなく、

様々な星に住む人々との出会いの中で葛藤しながらも王女さまにとってのバラの存在に気付く、というある意味で人間臭さが強くなっているのではないかなと

等身大の成長過程をリアルタイムに感じさせることで原案よりも共感性を高め、今作のスケールアップに繋がっているとも感じている

 

また、今作は原案同様、様々な星の住人に出会うが、そのキャラクターは現代日本人にアップデートされている

自惚れ屋は、偽装キラキラ女子の"さなえ"に

ビジネスマンは、キャリアウーマンの"ナオミ"に

点灯夫は、流れ作業員の"紀伊国坂"に

飲ん兵衛は、潔癖症の"マヤ"に

地理学者は、ヲタクの"どれみ"に

(おそらく)

 

それぞれを観客に近い存在に変えることにより、ここでも共感性は高められているだろう

 

 

キャラクターだけを見ると焦点を狭めているように思えるが、実はそんなことは無いように思える

身近に感じられる存在だからこそ、その思考の想像は容易く、共感できる部分は大いに見つけられるだろう

観客が作品に自らを重ねるきっかけを常に与えてくれる

 

 

それぞれの住人がひとつの欲望を突き詰めている原案と違い、

今作では住人たちが自らの星を飛び出し、別の欲望あるいは感情を持った他の星の住人たちと交わることで新たな欲望あるいは感情が誕生し、さらに作用していく

この部分が今作において一番重要なポイントだと思っている

 

この作用は、現代社会における価値観の多様化を表していると考えられる

 

原案からこの作用が読み取れないか、というとそんなことはない

事実、王子さまは様々な星の住人(おとなたち)に触れたことにより、後々ながらバラの存在価値に気付いている

新たな思考の誕生と十分に読み取れる

 

しかし、今作では住人同士の感情のぶつかり合いが新たな感情を生み出している

また、潜在的に持っていた感情を引き出し肥大化させている

個人の感情をひとつの場所に閉じ込めておくという閉鎖的な部分は取っ払い、開放的にすることは、多様化を受け入れる現代に通じるものがある

 

自らを受け入れ他人をも受け入れるということは、現代社会における重要課題のひとつであり、その先に新たな可能性が存在する

 

畑氏がどこまで現代に通じるものを散りばめたかは分からないが、感じ取れるものは膨大にある

私個人が感じ取ったものでも一部だろう

原案、今作ともに受け取り方や受け取るものは個々人で異なる

 

 

この話に限ったことではないが、世の中に答えなんてない

すべてが過程であり、常にその先を追い続けることで新たなものに出会えるのかもしれない

 

 

 

今作に選ばれた3期生8名およびスウィング8名が、これから先も板の上で答えを求め続けることを期待している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり