乃木坂46『シンクロニシティ』のMVはなぜ”フィルム”で撮られたのか

アイドルの今を永久に保存するためには

 

 

 

 

 

今回は池田一真監督の乃木坂46シンクロニシティ』のMVの話


乃木坂46 『シンクロニシティ』

 

 

誰々の表情がいいとか、このカットがどうとかいう話ではないです

いや、そういう話が無いわけではないけども

よりディープで、乃木坂ヲタの何パーセントが興味あるのか謎な話

 

 

 

で、何の話かというと、

シンクロニシティ』の撮影メディア

の話

 

ね、そんなん知らねーよって話でしょ

暇つぶし程度に、そんな見方もあるのね程度に

 

 

 

さて、『シンクロニシティ』は何で撮られているかと”映画用フィルム”

映画用とは冠しているものの、最初の用途が映画だっただけで、単純にローリングされたフィルムのうち写真用以外のものをまとめて映画用フィルムと言ってるだけ

 

年間に公開される映画本数のうち、ほとんどがデジタルシネマカメラ等を用いたデジタルでの撮影であり、フィルムで撮影された映画というのは数えるほど

ハリウッド等海外を中心に、フィルム撮影の比率が近年に比べ徐々に増えているものの現在は少数派であることにはかわりないです

 

日本ではどうかというと、フィルムで撮影された映画は年間1桁台の公開と海外よりも状況的には緊迫している状態

ただ、予算がめちゃくちゃ潤沢なCM業界ではまだまだフィルム撮影は一般的で、適当に1時間テレビ見てるだけでフィルム作品に出会えるかと

 

じゃあ、日本のMV業界はどうなのか

ほとんどフィルムで撮ったという話は聞かず、1年に1本あるかどうか

まぁ映画以上に予算が降りずらかったり、組みずらかったり、、、

基本お金の問題が大きいんじゃないかな

 

ということで、フィルム撮影によるMVは貴重(なはず)

 

 

 

さて、『シンクロニシティ』のMVの話に戻ります

 

 

使用フィルムはKodak VISION3シリーズのどれか

公表されてないため断定は出来ないですが、恐らく500Tじゃないかなと

ほぼほぼ勘だから、正しいところは謎

ちなみに500Tとは500が感度を表し、

TはTungstenの頭文字で色温度3200の元で撮影すると正しい色に現像できるという意味

色温度についてはフィルターを重ねることでTでも、D(Daylight)すなわち色温度5500の元で撮影が可能に

タングステンタイプのフィルムそのままで屋外撮影をすると青白くなっちゃうっていうね

 

感度については衣装が白でハイライト部分が多めなため、500じゃないかなと

出来るだけ白の中に階調を付けたい的な思考

 

ちなみに、 

同じ池田一真監督の欅坂46『W-KEYAKIZAKAの詩』もフィルム(16mm)での撮影


欅坂46 『W-KEYAKIZAKAの詩』

こちらはKodak VISION3 200T 7213使用と発表されてます

 

 

比べてみるとかなりきめ細やかな気がするので、フィルムサイズは恐らく35mm

というか、乃木坂さんは35mmで5分の作品撮れるぐらいに予算が潤沢であって欲しい←

 

 

《2018/04/29 03:30追記》

シンクロニシティ』Type-Dに収録されている、

吉田綾乃クリスティーの個人PV『一ヶ月前、春のうた』


乃木坂46 吉田綾乃クリスティー 『一ヶ月前、春のうた』

を監督されている頃安祐良氏と、

シンクロニシティ』のMVをはじめとする、数多くのP.I.C.S.による乃木坂46の映像作品において映像プロデューサーをされている諏澤大助氏との『シンクロニシティ』MV公開時のやりとりを見てみると、使用フィルムについての言及があったようです

 

 

プロデューサーである諏澤氏本人により、35mmフィルムでの撮影と明言されていたようです

完全に見落としてました←

 

というわけで35mmフィルムの撮影であることは確定です

 

 

 

ちなみに35mm400ft巻きで大体シンクロニシティ1本分の撮影が可能(4分20秒ほど)

価格は43,080円(税別)

高い

 

高い

 

ついでに言うと、撮影フィルムの現像後、デジタルデータに変換するためにテレシネという作業が必要なんだけども、その費用も高い

一般向けで 35mmの場合、10分5万円程度が大体の相場となっており、それがプロ向けとなるとまぁお察し

 

とにかく、フィルムで撮影するということは、デジタルという比較的安価なメディアが存在する現在では、どうしても高価ということになってしまうわけです

 

 

 

そうであれば、尚更なぜ、『シンクロニシティ』のMVの撮影メディアとして”フィルム”が選ばれたのか

それとなく考察してみます

 

 

池田監督が『W-KEYAKIZAKAの詩』を撮影した際、16mmフィルムを選択したことに対して、このようなコメントをしていました

 

 

 「彼女たちに実際起きたことを軸にしたストーリーなのでビデオのクリアな画だと生々しく見えすぎてしまう。過去の記憶の中に広がる世界、白昼夢のような非現実感を描くためにフィルムを選択した」 

 

この時は、”非現実感”を演出するためにフィルムが選択されたと

 

では、『シンクロニシティ』ではどうか

公式に何か出されているわけではないので、ただのヲタクの妄想です

 

シンクロニシティ、つまり、意味のある偶然の一致とされる際には、必ず当事者の感覚があるとされています

興味があるからこそその人に目が行き、偶然の一致とされるわけです

 

ということは、この楽曲においてメッセージ性を高めるためには、発信側である乃木坂46と受信側であるこちらとを、その関係以上に、感覚的な繋がりを高めなければならないということだと思うわけで

そうなると、デジタルのある種平坦な画で届けるよりも、人間の感性に対して働きかけるようなフィルムの画の方が合っているのかなと

歌詞から感じられる、”ひとりで抱え込むのではなく、複数の人々と感情を共有したい”という想いは、同時体験が重要である映画というコンテンツに通じるものであり、その原点であるフィルムを使用するということは、その共有性を高めているとも考えられる

 

 

不可逆であるフィルムという物理的記録媒体は、残そうと思えば永遠に残せる

本人としてはそこまで強調してはいないが、20thシングル『シンクロニシティ』が乃木坂46生駒里奈としてのラストシングルとなる

生駒里奈の最後の姿を、物理的に、フィルムに収めたことは大いに意味があるように感じられます

 

 

 

フィルムの特性的な面から考えると、ハイライトやシャドーの部分が大きく関係しているのかなと

デジタルでは不要とされ最少限度の情報のみ保持される部分だが、フィルムにおいてはその選択はされず、すべての色情報がフィルム上に保持される

これがどういう意味を持っているかというと、白や、黒にさらなる深みが出てくる

すべての黒はもちろん同じ黒でなく、その黒の部分にもともと何があったのかなど様々な要因で、その色味は変わってくる

白についても同様、というよりむしろ白の方が重要かも

白飛びというワードで片付けるには勿体無いぐらいの要素がこの世界の白には隠れてる

デジタルだとあまり記録されない部分なので、フィルムにより色の表情が浮き出て、人間の感性に対して訴えかける要素が増えることになるかと思う

 

あとは、画の柔らかさ

基本的にエッジが鋭くなく、人物が柔らかく映るという印象が強い

ちょっとした不安定さも感じられ、曲にも合っているのかなと

 

 

 

フィルムという選択肢は選ばれるべくして選ばれ、その効果は様々な方向性で、ごく自然に我々に訴えかけている

そこを知らずしてみるのもそれはそれで良いかもしれないけど、探求することによりその意味はさらに増幅し濃くなっているものなのかなと思います

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから先は、フィルムっぽいとかそんな感じのカットを頭から順に適当にあげていきます

あとは好きなカットとかとか

 

 

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ファーストカット

純粋に綺麗

光を多めに取り込みながらも木の交差する影など暗部もしっかりあり、このフィルムのポテンシャルを感じられる

 

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白石さん美しい。。。

だけでなく、山下の顔のシャドー部分がすごい

しっかりと表情、というよりかは顔色が感じ取れるあたり素晴らしい

 

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背景の白具合と顔のシャドー部分との差よ

どっちかに転びそうなところをどちらもしっかりと写している

露出をしっかり決め込んでいるのかこの時点で既に安定感が素晴らしい

 

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前述したエッジの柔らかさが際立つカット

フォグを焚いているとはいえ、ふわっとした感じが良き

 

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白が白では終わらず、それぞれの白が独立して存在し、際立っているなと

左腕、右腕、それぞれの白から感じられる感情は全く違う

 

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こちらはシャドー部分

MVのテイストとして全体的に白いため、暗部はそこまでないかと思ったら、このMVかなり影の演出がされている気がする

キーライトにあたるものが後方にあるため、その分正面から見えやすい部分に影が出やすくなっている

だからこそ、そこに対しての表情付けがしっかりしているのかなと

 

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ももちゃん可愛い

この笑顔こそ乃木坂の今に必要なもの

それだけ

 

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鼻筋サイドと左右の頬部分との差が美しい

デジタルでも全然撮れるんだろうけど、フィルムだからこそ出せる柔らかさが加わって、なんというか脆さに近しいものを感じる

 

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山下さんに影そこまで乗るの!?となるけどもしっかりと見れる表情

《2018/04/29 02:30修正》

生田さんに影そこまで乗るの!?となるけどもしっかりと見れる表情

シャドー部分に関してはこのカットが一番わかりやすいかも

白石さんの生命感溢れるこの振り付けと、この後の流れが好き

 

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他のカットに比べ、窓外の白が弱く感じられるため暗部が目立つなと

ここらへん露出の問題かな?

だからこそ、シャドー部からフィルムの粒状性が感じられる気もする

 

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大正義生駒里奈

先述したフィルムの特性が良く出てる一連のカットだなと

 

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他のカットと比べハイライト強め

背景が黒のためそうしたのかなと

それでも画は力強い

 

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やっぱりラインの出方が綺麗

明部や暗部をそれぞれ保持しながらも、部分ごとに別の表情を引き出してくれる

 

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これはもう完全に揚げ足取りみたいなやつになっちゃうんですが、テレシネ時にフィルムにゴミがついているなと…

白石さんの目の位置からまっすぐ左にいったあたりにある白い点のこと

正直、フィルムから100%ゴミを取り除くことはできないのでしょうがないよな、と

ただ、テレシネ後のデジタル処理の段階で除去は可能なのに、あえて行われていないと考えると、そのままの質感等を届けたかったのかなと思ったり

 

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髪色ひとつ考えてみても、その色味は人それぞれであり、それが光が当たる中で表現可能というのはフィルムの強みなのかなと

個性の反映にもフィルムは有用な気もしてきた

 

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もう顔の明部と暗部の差よ

少し悲しげで儚さを感じさせるような動きや表情ながらも、人間臭さを生み出せる色味を持っている

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段階的な変化がわかりやすい(気がする)

6段チャート的な←

 

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ただただ綺麗

これもハイライトとシャドーの一体感が凄まじい

手前から奥にかけて、上手から下手にかけて、それぞれのグラデーション綺麗

 

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肌が赤みのある血が通った色で綺麗

人間の肌を生きているように写すためにはフィルムが一番綺麗だと思う

指先からも感情が感じられる

 

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ラストカット

あぁフィルムだな、と

この人間らしさを感じられる美しさこそフィルムである理由だと思う

ラストにはあまりにも美しすぎる

 

 

 



以上、適当に色々と書いてみました

 

シンクロニシティ』はフィルムで撮られるべき作品だと、ここまで振り返って改めて感じました

これからも(予算が降りる限り)乃木坂46をフィルムに収めて欲しいなと思う限りです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィルムを無くさせないためにも

 

 

 

 

 

おわり