アイドルのMVのつくりかた 【青春高校3年C組 アイドル部『君のことをまだ何にも知らない』編】
いつかみたその景色を、もういちど
青春高校3年C組の『君のことをまだ何にも知らない』の話、
Short ver.
青春高校3年C組 アイドル部『君のことをまだ何にも知らない』(Short Ver.)
Fulll ver.は、青春高校3年C組の12月20日放送回の17:10あたりから
12月20日(金)「君のことをまだ何にも知らない」MV大公開 - LINE LIVE(ラインライブ)| 国内最大級のライブ配信サービス
Full ver.ラストの【"好きです"フィーバータイム(頓知気さきなvoice)】のえげつなさよ、、、
漏れなく全員可愛いとか何事
そして、天才
これだけ共通認識的な”かわいい”が詰まってるMVも、割と最近では珍しいのかなとも思ったり
Full ver.は現状、上記LINE LIVEの放送アーカイブからしか見ることはできないものの、1月にはYouTubeにもUPされるらしい
このペースだと1月22日の発売日周辺に公開なのかなと
Short ver.が2週間で約7.5万回再生されてる現状と考えると、さっさとFull ver.あげた方がいいような気がしなくもないんだけども
まぁたぶんYouTube Music周りの問題だとは思うんですが
Apple MUSICとかの他音楽系サブスクは先行配信って形で足並み揃えられれば問題解決できなくもない気もするんですが、なんとも言えないとこ
いうて去年の頭とかに聞いた話なんで今もそれが続いてるのかは分からじ
事実、すでに公開済みの『青春のスピード』とかはYouTube Musicでは未配信なので微妙な話ではあります
アーティスト登録するかどうかとかの微妙なラインの話なのかも
Short ver.でも十二分にみんな可愛いものの、内容としては序章にすぎなくて、Full ver.になった時はじめて完成されるMV
10秒前の序、告白の破、その後の急
そんな清々しいほどにストレートすぎる三幕構成が、まだまだ初々しい青春高校3年C組アイドル部のメジャーデビュー曲のMVでむちゃくちゃに活きてる
ある意味短絡的である一方、究極的であるだけに、”アイドル”のMVというカテゴリーにおいてはどこか原点回帰のような雰囲気すら感じられる
なんだあのおじさん、どこにこんな才能隠してたんだ
2020.01.22追記
青春高校3年C組 アイドル部『君のことをまだ何にも知らない』(Full Ver.)
とりあえず暫定的にここにFull verぶち込んでおきます
みんな、見てくれ
近々、もっと記事内容もボリュームアップできればとか考えてたり
で、まぁ本筋は何かというとその”おじさん”の話
ここで指す”おじさん”とは青春高校3年C組のプロデューサーである、44歳の既婚者で中1の娘がいるテレビ東京所属の会社員なのになぜかANN0の水曜パーソナリティーを務める、佐久間宣行のこと
撮影2週間前に企画・監督をすることが決まるとか、13本の告白シーンのプロットを深夜1時から書き始めて翌朝9時の会議までに書き上げるとか、水曜深夜のラジオ終わりに編集始めて金曜夕方の放送までに上げる等々、44歳のおじさんがむちゃくちゃ頑張った裏話はいろいろとありますが、そこらへんは各位、12月18日放送の佐久間宣行のANN0を聞いて補完してください()
さて、表側の話で何を取り上げたいかというと
アイドルのMVのつくり方の話
相変わらずコアな話ですが、興味持ってもらえればなと
ある意味では基礎的な部分の話かもしれないです
Full ver.がまだYouTubeに上がってないので、とりあえず画像はShort ver.でみれる範囲で
各自、どうにかしてFull ver.見ながら追っていってもらえれば
気が向いたらYouTube解禁後にでも増補版的な感じで更新できればなと
まずは、アイドルのMVの基本構成から
アイドルのMVといえば、ダンスシーン
このMVに限らず、アイドルのMVにおけるダンスシーンの動きって、見比べてみると意外と単調
ヨリ・ヒキ違いはあれども、横移動や前後移動の組み合わせが基本
めちゃくちゃソロのアップだとしても、だいたい背景は動き続けてる
基本がドリーの移動だとして、それに加えて、クレーンを使った縦移動であったり、MoVI等々スタビライザーを使って動き回ったり、ドローンを使った空撮等々予算が増えるにつれて動き方のバリエーションが増えていくという
そこにそれぞれメンバーのリップシンクやイメージショットが加わるだけで、想像するようなアイドルのMVはだいたい出来上がります
適当なアイドルのMV再生してみると、だいたい当てはまるかと
そして、最近(でもないけど) そこに付随して多いのがドラマパート
曲の世界観だったりイメージをひとつの本に起こして、セリフ等々も入れ込むこともありながら、曲と合わせてひとつの作品を構成していくという
アイドルが昔よりも映画やドラマ、舞台等演技分野にも進出する機会が豊富で、マルチ化していることもあり、監督側が演技力を求めやすくなってることもあるのかなと
そんなことを踏まえた上で『君のことをまだ何にも知らない』のMVを見返してみると、、、
このMV、ドラマパートが多い!!!!!
リップシンクなんてひっっっっっとつも無い!
イメージショットもメンバーみんなが落ち葉巻き上げるぐらいという少なさ!!
ダンスシーンは各サビのみ!!!
ていうかなんならドラマパートがサビに食い込んでる!!!!
究極までにドラマシーンを詰め込んできるわけですよ
個人的なイメージとして、ドラマパートがメインになるMVの多くが割と作品性だったり作家性だったりが表に出されることが多いように感じていて
だけど、このMVは全然そんなことなくて
13(12)本連続、異なるシチュエーションで展開していることもあるだろうけど、それ以上に何か強いものがあるなと
それは、おそらく見た人の誰もが、いずれかのシチュエーションのどこかの瞬間に引っ掛かるからなのかなと思ったり
非現実的でなく、日常に存在する(していた)風景の連続だからこそ、その共感性に引っ張られ、気づいたら惹き込まれていくんだなと感じてます
だからこそ、告白の前後というありがちな展開の中で、そういった要素を持ち出すことによってエモーショナルに満ち満ちたMVに仕上がってるなと思いました
あと、カット割りがめちゃくちゃ映画的
何が映画っぽいってロングショットの多さ
13人12シチュエーション中、9シチュエーションで全身フルサイズ以上のロングショットが使われているという
その使われ方も、シーン頭で状況説明的に使われるだけでなく、シーン途中に再度差し込むことで客観性を取り戻させる等々、むちゃくちゃ技術的
これって実はなかなか挑戦的で、こういう群像劇的なドラマパートを採るMVにおいて、それぞれのシーケンスごとにロングショットが用意されることって意外と無いんですよ
最近だと、乃木坂46の『夜明けまで強がらなくてもいい』とかは、ドラマパート(と言っていいのか分からないけど)が11シチュエーション程度ある中でフルサイズ以上のロングショットがあるのは2つぐらい
ダンスシーンやリップシンクの比率が比較的高いMVではあるので、純粋な比較はできないですが、そんなもんなんです
何よりもすごいのが、そのロングショットたちがどれも一度みただけなのに思い出せるほどの印象を残せる、画の力強さを持っていること
先述した乃木坂46 『夜明けまで強がらなくてもいい』のMVにあるロングショットのひとつに、山下美月があぜ道で後ろを振り返るというというのがあるんですが、1度でも見た人は"あぁ、あれか"となったかと思います
他のドラマパートの多くがアンバー系だったり、ダンスシーンがクール系だったりで、グリーン系のこのシーンだけ浮いてみえるのもあるとは思うものの、
それ以上に、ロングショットを状況説明的なエスタブリッシュショットだけに収まらせず、グッと視点を被写体に集中させ魅力を引き出すという力を活かしてるなと
それはこのMVでも同様で、とにかくどのロングショットもインパクト抜群で魅力的
アイドルのMVであるからこそ、かわいい!顔面最強!で終わらせず、青春高校というコンセプトが持つ初々しさまで含む等身大の姿が放つ空気感だったりまでを余すところなくロングショットで表現してるわけですよ
これをどこまで意識してやってるのか分からないけど、ひとつのカタチに仕上げてしまうあのおじさんの才能は底知れない
ひとつのシーケンスの中のワンカットに陥らず、象徴的なカットにまで昇華されることができるのは、隙間時間でスマホ片手に佐久間スタイルで映画やドラマを見まくってるからこそなのかなと
とにかく、いろんな映像作品に触れまくってるからこそ導き出せる選択肢だと思います
あと編集もめちゃくちゃ良いんですよ
Short ver.でみれる範囲でいうと、大曲からの西村の流れ
ほぼ同サイズ・同ポジでつなげた上に、男女立ち位置逆転
さらに若干シルエット気味
あんなに情報量が多いMVの中でこんなにスムーズな編集は最適すぎる
別の場所で起きている個別のシチュエーションでありながらも、どこかつながりを感じられる演出は素晴らしい
他にも、齋藤のところで兼行と大曲が出てくるとかいう物理的なつながりもあったりするんですが
あと、流れの話でいうと兎遊のシーン
前後に女鹿、持田とある程度相手との関係性が近い2人のシチュエーションをもってくることで、近い(女鹿)・遠い(兎遊)・近い(持田)の流れになり、偏りすぎずなんというか胃もたれしないように組み立てられてるわけですよ
再び大曲の話になるんですが(現状で気軽に見れることもあり)、ヒキ・ヨリ・ヒキの流れが綺麗すぎる
この順は他のシーンでも多く使われているものの、大曲のシーンはカット割りも相まって最高
まずニーショットからはじまり
クローズアップ
そして、フルショット
いやー、大胆すぎる
よくある流れは、エスタブリッシュショット的な意味合いでも、フル→CU→ニーだと思うんですが、これを入れ替えてしまう潔さ
10秒程度しかない、短すぎる時間を切り取るからこそ、こんな大胆さを見せられるのかなと
そして、先述した流れ
素晴らしい
あと3分割構図もしっかり使ってくるんですよね
まぁこの日比野のシーンは松本監督演出パートなんですが()
これは横ラインでの3分割
佐久間さん演出パートだと頓知気とか
横でも縦でも3分割
なおかつ人の位置調整して人物が浮き立つようになってるという
そこらへんの詳しい話は、気が向いたら『JOYFUL LOVE』のときに書いたやつでも参考にしてみてください
あとはもう、みんなシンプルにかわいい。最高
(推しの画像だけ大きめにすな)
これだけの表情を引き出せる佐久間さんの演出力は、やっぱり侮れない人だなぁと
いや侮るなっていう話ではあるんですが
かわいい画を羅列したり、佐久間さんも「超かわいく撮れたんだよ」とか「めちゃくちゃかわいくないですか!?」とか割と”かわいい”を推してくるけど、このMVが持つパワーは別のところにあると感じていて
アイドルのMVにありがちな、かわいいの押し売りに留まらせず、
適度に物語性も織り交ぜつつ、誰もが見たことある・誰もが考えたことがある、そんな風景を取り込むことでより共感性の高い、ひとりよがりでない周りも巻き込んで完成されていくようなMVになってるなと思うわけです
アイドルのMVというものが、単なるヲタク向けのコンテンツに留まらず、ソトへと発信していく手段のひとつとして扱われるようになっている以上、こういった万人受けとはまた違った、誰にでもハマる作品の重要度は高いと感じています
そういった状況の中でこのMVが生み出されたことはある意味必然であるようにも思えます
まぁそんな作品を生み出すことは中々に難しいと思うんですが
そういった意味でも、ここまで落とし込んだのは凄まじい
アイドルという文化自体が多様性に満ち溢れているように、それを活かしたMVも同様に多様性を示してきている中、この作品に出会えたことは彼女たちにとって大きなきっかけになるかと思います
また、松本壮史監督と佐久間宣行監督が作り出したこの作品の持つ功績は想像以上に偉大なもの
青春高校3年C組がここからまたひとつ新たなステージへと導かれればいいなと思ってます
なんだあのおじさん、最強か
おわり