戯曲『三人姉妹』にどう向き合うか。
表面を浚うだけじゃもったいない。
前回に引き続き、『三人姉妹』の話
今日の観劇後、「難しい」という会話が博品館劇場のロビーやら階段から聞こえてきたのでざっくり解説
というかこれぐらい知っておくと楽しいよっていうやつ
(後半にかけてなんか雑になっているのは否めないですが悪しからず)
ただ、戯曲を読んでくれというポリシーは変わらないので←
さて、この戯曲が執筆されたのは1900年、初演は翌年のモスクワ芸術座と今から約100年前
時代設定もそれと同時期になり、帝政ロシア末期で皇帝や貴族たちの権力というものは次第に弱まり、ロシア革命が行われる直前だということが分かる
そして、登場人物たちロシア帝国に住む人々は、これから社会主義へと変化していくことに対して希望を持っているんだろうなと
事実、劇中「25年後、30年後にはみんなが働いているだろう!」という台詞があったり
では、三人姉妹たちプローゾロフ家はどういう状況に置かれていたのだろうか
一家の当主は大佐、つまり軍人
オーリガ、マーシャ、イリーナ、アンドレたちが幼少の頃はモスクワが任務地であり、生活は華やかで、姉妹それぞれに語学や楽器といった教養を身につけさせるほどの余裕がある家庭であることが分かる
しかし、赴任の関係で11年前に現在の場所へと一家共々移り住むことに
この場所は駅から20kmも離れているほどの田舎であり、モスクワに住んでいた頃と比べると周囲との関係や生活の質は劣っていただろう
1年前に父が死ぬが、その時に参列した人数はモスクワ時代を考えると少ないものだった
父の死後、一家全体は寂れ、姉妹たちは華やかであった幼少期に住んだモスクワに戻りたいと強く懇願していく様に...
このあたりはほぼほぼ予備知識
あとは時間経過を押さえていれば大丈夫かな、というわけでそのあたりの話を
この戯曲は4幕から構成されているけども、短期間での一連の流れにはなってない
各幕毎に一定の期間が流れていて、その時間経過こそが重要だったり
1幕について、時期は先述したプローゾロフ家についてと変わらない
しかし、この1幕がどんな日なのかというのが地味にキーだったり
この日は、3女イリーナの"名前の日"
日本人には到底馴染みのない文化だが、キリスト教圏ではかなり重要
聖人暦と呼ばれる365日全てに聖人の名前が振り当てられたカレンダーの存在と、子供の名前に聖人にちなんだものを付ける習慣が相まって発生したものと考えていいかも
要は、第2の誕生日みたいな感じ
そんな日であれば、方々から色々な人が集まり、そこから交流が生まれていくのも必須
というわけで、普通にネタバレですが、アンドレとナターシャは結婚することに
オリガとイリーナの間では秋ぐらいにはモスクワ行きたいなーなんて話が
さて、2幕
始まると、ナターシャがアンドレに時間を聞くと「8時15分だ」と答えるシーンが
あぁ、1幕の午後の話ね、と思いきや全くそんなことはない
2幕は1幕の3年後の話
ということはモスクワ戻れてねーな、と
結婚したナターシャとアンドレの間にはボビークという子供が誕生
他の面々も変化はあるものの、そこは台詞からだいたい理解できるかなと
あげるとすれば、イリーナが電信局で働き始めていることかな
秋頃と目安は付いているものの、早くモスクワに帰りたいイリーナ
3幕は1年後の夏
結局まだモスクワには移れてないねっていう
ここの時間変化は大きなものを登場人物たちに与えてないかな
この町にいる軍隊が全部どっか移るらしいよみたいな噂話が広まっていく
やっぱりモスクワに戻りたいイリーナ
4幕
軍隊移動の日
それだけ分かってればあとはもう自然と理解出来ていくはず
3幕からの時間経過はそこまでないものの、この間の説明されない変化は多すぎる
けどまぁ処理できない量ではないから大丈夫でしょ精神
めちゃくちゃざっくりに、ここ押さえとくと物語理解しやすいんじゃない的なところだけピックアップしてみました
まぁ、これだけ見ても正直意味わからないと思うので、実際の戯曲を観て理解してもらえばと
意味分からなかったで終わっちゃうのはもったいない戯曲
内容にとらわれず、チェーホフが何を言いたかったのか、赤澤ムックが何を伝えたかったのか、そこを重点的にチェックしてほしい
そんな戯曲
三人姉妹という戯曲に主人公らしい主人公はいない
— りざると (@result33) 2018年1月24日
ストーリーらしいストーリーもない
だって何も起こらないのだから
ただ登場人物すべての環境と心情の変化だけを感じていけばいい
そうすれば根底にあるものが見えてくるはず
おわり